高速ギアで負荷を与えた時のノッキングについて
(by えんど)
【概要】
 走行距離55,000kmのJaguar XJ40,XJ6-3.2('94)最終型で発生した駆動系の異音はノッキングと推測された。ノッキングは高速走行中の高速ギア設定で負荷を与えた時に発生した。音量は極めて低く、音質は「金属質の強いカリカリ音」であった。この現象はプラグまでの電気系や水抜きなどの対策によって完全に消失した。
キーワード【XJ40、AT車、異音、ノッキング、プラグ、水抜き】
【はじめに】
 ノッキングは通常MT車などで低速走行時に高ギアに入れエンジンに負荷を与えた時に好発する場合が多い。その音は空き缶を蹴って転がった時のような「カラカラ音」に代表されるが、車種や発生原因によってその音質を異にする。AT車においてもノッキングが発生する場合はMT車よりも頻度は少なくなるであろうが、条件が整えばほぼ間違いなく発生する。今回著者のJaguar XJ40,XJ6-3.2(走行距離55,000km)で発生したノッキングは高速走行中の高速ギア設定で負荷を与えた時のノッキングであり、音質も「カラカラ音」とは異なった「金属質の強いカリカリ音」であった。この現象はプラグまでの電気系や水抜きなどの対策によって完全に消失したので報告する。
【症状】
 時速ぬふわkm/h(約3,000rpm)で巡航中アクセルを踏み瞬間燃費5km/L程度のエンジン負荷をかけ無変速にて加速すると極く低音量ですが「カリカリ」と金属を打ち鳴らしたような異音が発生。他の速度域ではエンジン音や変速による間隔の短さから聴音不能であった。発生した異音はテレビの垂直方向の調整ネジを回した時に観察されるパタパタと同じ程度の速度をもつ周波数で、周期性のあるカリカリした異音。オーディオを切らないと気がつかない程度の音量であった。
 異音の発生源は特定できなかったが、周期的な異音とエンジン回転との同調具合から、エンジン本体、AT、デフ等の駆動系ではないかとの疑いが持たれた。
【材料と方法】
 異音はノッキングであると推定し、これにそって対策を講じた。
材料と方法はオクタン価98のアルコール系燃料であり水抜き効果に優れた性質をもつガイアックス40リットルを燃料タンクに注いで満タンとした。この状態で約500km高速走行し、タンク内の水抜きを行うと同時に燃焼室内のカーボン除去を期待した。続いてXJ40のエンジンカバー溝をタオルで丁寧に拭き取り、パソコン用エアブロアスプレー(以下ブロア)を使用して砂や乾燥泥等の汚れをプラグキャップ周辺から完全に除去し、エンジンヘッドカバーを清掃した。プラグキャップをつまんで抜き取り、プラグホール内をブロアにてフラッシングし内部の砂や汚れを外部に吹き飛ばした後、ネプロス製の16mmプラグソケット、300mmエクステンションバー、3/8ラチェットを繋いで1番プラグから順に抜いて6番まで抜いて清掃した。
 清掃は特にアースの役割をになうプラグネジ部の溝に着目し、蓄積したカーボンや劣化グリスを除去後オーディオ用アルコール溶剤系接点復活剤スプレー(以下接点復活剤)を用いて、各接点に塗布した。
最後にサビ除去剤をディストリビュータ(以下ディスビ)内の各接点に塗布、ロータの各接点部にも塗布し10分経過した後に洗浄および接点復活剤を施した。水抜き剤296ml×2本を新たに燃料タンクに入れ、オクタン価104のハイオクガソリンで満タンとし対策を終了した。
【結果】
 ガイアックス使用後の500km走行を行ううちに、金属質のカリカリ音は腕時計や旧式のアナログストップウォッチのような「チキチキ音」へと変化した。また音量もさらに低音量へと変化し、音の周期性も「規則的」なものから「音のやや欠落した規則性」へと変化した。プラグへと続く点火系の接点を強化した後は異音の感知に気付くことなく、最後には再現走行で完全に異音が消失したことを確認した。
【考察】
 点火タイミングなどがメーカーの指定どおりであれば、ノッキングは通常起こりにくいとされている。しかしそれでもノッキングが起こるとすれば、エンジン内部にカーボンが堆積していることや噴射燃料の希薄化、使用燃料の低オクタン価化、また劣化したプラグでは点火前スパークが起こる可能性が指摘されている。
 カーボンというのは、ガソリンが燃焼したときのカスで、混合気が完全に燃焼しなかった場合に発生する。これがシリンダーヘッドやピストンなどに付着をくり返し、混合気が燃焼しながら広がっていくときに、カーボンの断熱作用によって自然発火を起こしてしまう。また混合気がリーンであったり、燃料が低オクタン価で圧縮に耐えきれない場合にもスパーク前に点火して異音が発生する。これらはノッキングと呼ばれており、今回の異音も対策とその結果によりノッキングであったことがうかがえた。ディスビ内の各接点は30,000kmの確認時には新品と遜色ない状態であったが、56,000km現在では白色の腐蝕物が蓄積し、サビ除去剤や接点復活剤を用いても容易なことではぬぐい去ることは出来なかった。ここまでなると、交換が望ましいと思われる。
 これに対してロータ中心の電力受部や接点のエッジ部の酸化皮膜はサビ除去剤にて容易く除去できた。
また使用から30,000km経過したプラグの極面の状態は非常にクリーンであり、ガイシの色も新品同様であった。電極部のエッジはやや丸みがかってはいたが、交換をためらう程度の消耗度であった。ガイシ周囲のマイナス側の燃焼室面には部分的にカーボン付着が観察されたが、その他は焼けた金属色(黄金色)がのぞき、最近になって剥がれたことが窺えた。
 今回の実験では正しいスパークを保証することとノッキングの関連を説明するには至っていないが、発生したノッキングがこの処理の後に消失したことから、3000rpmの回転域から先の連続したスパーキングにスムーズさを与えたことと非常に深いかかわりがあったものと考えられる。
 ガイアックスの水抜き効果は非常に優れており、その効果は月刊誌オートメカニック(2000年10月号)を見ても窺える。またこの燃料はガソリンよりも炭素量が低いため、燃焼室内のクリーニング効果も期待されている。この処理中に音質が変化したことで、水抜きおよびカーボン除去効果があったことは否定できない。プラグの色の状態も25,000km時に外したものと比較すると桁外れに今回の方が清潔である(消耗度には変化なし)。
使用した接点復活剤にはアルコール溶剤とシリコンが含まれているが、アルミホイール上に接点復活剤の皮膜を作成し、電気抵抗を観察したが、抵抗値はゼロであったため自動車への使用にも問題ないと判断された。
 ネプロスの工具であるが、これは純正工具でははまらなかった2番プラグにも容易くはまり、その使用においてなんら不満を覚えなかった。エクステンションもトルクによって「しなり感」が非常に良く、ラチェットの動きを柔らかくプラグソケットに伝えていた。ラチェットであるが、中空構造を生かしたバランスがハンドルをより生き生きとしたものへと換えさせ、女性でも扱いは容易に行えるものであった(著者の作業中にホンダトゥデイのプラグ清掃に借り出される始末であった)。ソケットも非常によくプラグをホールドしており、まっすぐにのびたプラグははめ込みにおいてななめに入るなどとは無縁の存在であった。
今後もこの調子でメンテナンスに励みたいと思う。
 最後にノッキング現象を指摘してくださったあおき氏、工具選定にあんど氏の協力に心より感謝します。
【注意】
 GAIAXに関してはLINK(その他)を参照してください。またGAIAX使用に関しては、使用者の責任でお願いします。
燃料タンク内の水分浸入はガソリンキャップのパッキンの劣化による侵入・燃料ドレンのつまりも考えられますので、点検を忘れずに・・・
一部 速度表示等 変更してあります。ご了承下さい。(ヒント:100km/hは、ぬわわkm/hと表示します)
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